この記事の要約

朝の配信中、コメント欄に浮かんだ「悩みなさそう」という言葉。それはアイドルとして最高の褒め言葉であると同時に、画面の向こうにいる誰かのSOSかもしれないと感じました。一人カラオケで普段歌わないバラードに挑戦して気づいた、私らしい元気の届け方。裏側にどれだけ泥臭い努力があっても、表では圧倒的な光でありたい。誰かの重たい朝を吹き飛ばすための、私なりの覚悟を綴った記録です。

コメント欄に浮かんだ六文字の言葉と、配信後の静かな部屋

朝5時。まだ外の空気がひんやりとしている時間帯、私はいつものようにリングライトのスイッチを入れました。パッと六畳の部屋が明るくなり、スマホのカメラ越しに私の顔が照らされます。大きく深呼吸をしてから配信開始ボタンを押すと、すぐにたくさんのアイコンが並び始めました。「おはよう!」「今日も元気だね!」という言葉が次々とコメント欄に浮かんでは消えていくのを見ていると、私自身の眠気も一気に吹き飛んでいきます。

りん本人と「コメント欄に浮かんだ六文字と、カラオケボックスで途切れたスローバラード」の内容を表すブログ挿絵
りん本人の雰囲気と記事の情景

そんな中、ふと目に入ったのが「悩みなさそう」という六文字でした。悪意なんて全くない、むしろ純粋な感想として書き込まれたその言葉に、私は一瞬言葉を詰まらせ、すぐに「えへへ、よく言われる!」と満面の笑みで返しました。配信中は次から次へと話題が移り変わっていくので、その会話もすぐに過去のものになっていきました。でも、一時間の配信を終えてリングライトの電源を落としたとき、薄暗くなった部屋の中に、その六文字がポツンと残っているような感覚に陥ったのです。

「悩みなさそう」と言われることは、私にとって何よりの勲章です。だって、見ている人に元気を与えたいと願うアイドルにとって、ネガティブな要素を感じさせない完璧な状態を作れているということですから。母がいつも言っていた「笑ってる人のところに夢は来る」という言葉を胸に、毎日欠かさず笑顔の練習をしてきた成果が出ている証拠でもあります。

けれど、同時にこうも思いました。その言葉を書き込んだ人は、もしかすると今、抱えきれないほどの悩みの渦中にいるのではないかと。自分が苦しいとき、他人の底抜けな明るさが眩しすぎたり、うらやましく見えたりすることは誰にでもあります。文字だけのやり取りでは相手の表情も声のトーンもわかりません。だからこそ、その短い言葉の奥にあるかもしれない見えない体温やため息に、思いを馳せずにはいられませんでした。

冷房の効いたカラオケボックスで、あえて選んだスローバラード

昼下がり、私は発声練習とダンスの振り付け確認を兼ねて、駅前のカラオケボックスにやってきました。冷房がキンキンに効いた狭い部屋には、独特の機械の匂いが漂っています。デンモクを手に取り、普段通りBPM120以上のアップテンポなアイドルソングを次々と予約していきました。マイクを握りしめ、ステップを踏みながら全力で歌うと、あっという間に額に汗がにじみます。履歴画面を見ると、見事なお祭り騒ぎのようなセットリストが並んでいて、思わず一人でふふっと笑ってしまいました。

数曲歌って息が上がってきた頃、ふと朝の配信での出来事が頭をよぎりました。「悩みなさそう」という言葉。もし私が、誰かの心にそっと寄り添うような落ち着いた存在だったら、また違った言葉をかけられていたのでしょうか。そんな好奇心から、普段は絶対に選ばないような、しっとりとしたスローバラードを予約してみました。

アップテンポな曲が終わり、部屋の中がふっと静まり返ります。ゆっくりとしたピアノのイントロが流れ出し、天井のミラーボールが青い光を落としながら静かに回転し始めました。マイクを両手で包み込むように持ち、メロディに合わせて声を乗せてみます。しかし、スピーカーから響いてくる自分の声は、なんだか頼りなくて、息継ぎの音ばかりがやけに大きく聞こえました。

歌詞には、立ち止まって泣いてもいい、無理しなくていいという優しい言葉が並んでいます。確かにそういう慰めが必要な夜もあるはずです。でも、私が歌うと、どうにも嘘っぽく聞こえてしまう気がしました。私はやっぱり、隣に座って背中をさするよりも、「ほら、行くよ!」と強引に手を引いて走り出してしまう方が性に合っているのです。バラードを最後まで歌いきる前に演奏停止ボタンを押し、私は再び一番元気な曲を入れ直しました。

雪に吸い込まれた足音と、無理やりにでも心拍数を上げてくれた曲

私が圧倒的な明るさにこだわるのには、理由があります。それは、私自身が過去に、底抜けに明るい存在に救われた経験があるからです。高校1年生の冬、札幌で行われたオーディションに落ちた日のことを、今でも鮮明に覚えています。結果を告げられて会場を出ると、外は猛吹雪でした。分厚いコートを着ていても寒さが骨まで染み込んできて、足元は雪に足を取られて上手く歩けません。

りん本人と「コメント欄に浮かんだ六文字と、カラオケボックスで途切れたスローバラード」の内容を表すブログ挿絵
りんが記事の中心的な場面を振り返る一枚

悔しくて、情けなくて、涙がこぼれそうになるのを必死に堪えていました。雪が街の音をすべて吸い込んでしまい、自分のキュッ、キュッという足音だけがやけに大きく響く帰り道。私はポケットからイヤホンを取り出し、大好きなアイドルの、一番騒がしくて元気な曲を大音量で流しました。悲しいときに悲しい曲を聴いて浸る余裕なんてありませんでした。無理やりにでも心拍数を上げて、前を向いて歩くための強引なエネルギーが必要だったのです。

そのときイヤホンから流れてきた歌声は、悩みなんて一つもないような、ただただ前向きで輝かしいものでした。その圧倒的な光が、当時の凍えそうな私をどれほど温めてくれたか計り知れません。だからこそ、私は誰かにとっての「あの時の曲」になりたいのです。

朝の配信でコメントをくれた人が、もし今、あの日の私のように冷たい雪道を一人で歩いているような気分なのだとしたら。私は、中途半端に同情するのではなく、「ここには悩みなんて一つもないよ!だから一緒に笑おう!」と全力で手を振る存在でありたい。眩しすぎるかもしれないけれど、その眩しさが暗闇に風穴を開けることだってあると信じているからです。

針と糸で仕込む元気の魔法と、明日へ向かうためのとびきりの笑顔

夕方、家に帰ってからは衣装のメンテナンスに取り掛かりました。母と一緒に手作りしたお気に入りのワンピース。よく見ると、激しいダンスのせいで裾の飾りがほつれかかっていました。裁縫箱から針と糸を取り出し、チクチクと縫い直していきます。表から見ればキラキラした可愛い衣装ですが、裏返すと、何度も縫い直した不格好な結び目や、つぎはぎの跡がたくさん隠れています。

私の毎日も、きっとこの衣装の裏側と同じです。朝5時に起きるための複数のアラーム、すり減ってツルツルになったスニーカーの底、上手く踊れなくて何度も床を叩いた夜。決して「悩みが何もない」わけではありません。泥臭くて、不格好で、立ち止まりそうになることだって数え切れないほどあります。作業中、うっかり針先を指に刺してしまい、チクッとした痛みに顔をしかめました。

でも、そんな裏側の努力や痛みは、すべてこの六畳間のクローゼットにしまっておけばいいのです。ファンのみんなに見せるのは、完璧に仕上がった表側の輝かしい部分だけで十分。それが、私なりのプロ意識であり、みんなへのおもてなしだからです。

明日もまた朝5時になれば、私はリングライトのスイッチを入れます。そして、カメラの向こう側にいるかもしれない、ため息をついている誰かに向かって、これ以上ないくらいのとびきりの笑顔で「おはよう!」と叫ぶのです。悩みなんて吹き飛ばしてしまうくらいの圧倒的な元気の魔法をかけるために、私は今日も、見えない場所でせっせと準備を続けています。

りん

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りん

明るく天真爛漫。ファンを大切にし、常に前向き。夢に向かって努力する姿勢を見せ、周りを元気にする。

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