この記事の要約
早朝の机の整理中、数ヶ月前に描いた「理想のパフェ」のイラストが出てきました。一番上のトッピングだけが真っ白なまま残された絵を見て、完璧を求めるあまり立ち止まっていた当時の自分を思い出します。でも、その空白があるからこそ想像が膨らむワクワク感に気づき、オーディションで無我夢中だった未完成な自分の姿が重なりました。完璧な夢に向かう途中の、真っ白な余白も愛おしむ朝のエッセイです。
机の奥から出てきた、半分だけ色づいたパフェの絵
窓からの風がまだ少し冷たく感じる、時計の針が6時を指す前の時間帯。今日は少しだけ早起きをして、ずっと気になっていた机の引き出しの整理を始めました。この引き出しは、私にとって宝箱のような場所です。手作りの衣装に使おうと思って集めているカラフルなスパンコールや、ピンク色のチュールの切れ端、そして何より大切な、ファンのみんなからの温かい言葉を書き留めているノートなど、私の夢を形作るものがぎゅっと詰まっています。

整理を進めていると、その一番奥の方から、一冊の小さなスケッチブックが出てきました。表紙には、元気いっぱいの大きな星のマークが描かれています。それは、お休みの日にカフェやスイーツ巡りをするのが大好きな私が、「今まで食べた美味しいものを全部詰め込んだら、どんなパフェになるだろう」と想像を膨らませて描いていた、いわば夢のレシピ帳でした。
パラパラとページをめくっていくと、数ヶ月前に描いた「理想のパフェ」のイラストで手が止まりました。色鉛筆を何色も重ねて、かなり気合を入れて描いた記憶があります。グラスの底には、光を反射してキラキラと輝くミントゼリー。その上にはサクサクのパイ生地を敷き詰めて、甘酸っぱいベリーのソースをとろりと掛けています。さらに、まん丸のバニラアイスと、淡いグリーンのピスタチオアイスを二つ並べて、グラスのひんやりとした質感や、アイスが少しだけ溶けかかっている様子まで丁寧に塗り込んでありました。
でも、一番上のトッピング部分だけが、ぽっかりと真っ白なまま、ぽつんと空欄になっていたのです。そこだけ時が止まったように、色が塗られていませんでした。
空白のトッピングと、完璧を求めて止まったペン
どうしてここで描くのをやめてしまったんだろう。イラストをじっと眺めながら記憶を辿っていくと、当時の私の気持ちが少しずつ蘇ってきました。グラスの底から順番に、ここまで完璧な流れで作ってきたのだから、最後に乗せるものは絶対に妥協したくなかったのです。真っ赤で大きなイチゴを王冠のように飾るべきか、それとも星型のアイシングクッキーを斜めに添えるべきか、あるいは花火みたいに華やかな飴細工で驚かせるか。
選択肢がたくさんありすぎて、「これだ!」という最高の一つを決めきれなかったのでした。完璧な形に仕上げたくて、一旦保留にしたまま、新しいダンスの練習や日々の発信に追われているうちに、すっかり忘れてしまっていたようです。
完璧なものを目指すあまり、途中で立ち止まってしまうこと。それは、このパフェのイラストだけの話ではないような気がしました。例えば、SNSでファンのみんなに向けて文章を書く時。「もっと元気を届けられる言葉があるはず」「もっと楽しんでもらえる表現にしたい」と何度も書き直しているうちに、なんだか自分の素直な気持ちから離れてしまっている気がして、結局下書きフォルダに眠らせてしまうことがあります。
新しいダンスの振り付けでも同じです。「もっとかっこいい動きを入れたい」「誰も見たことがないようなステップにしたい」と悩んでしまって、なかなか次の動きに繋げられないことがありました。最高のものを届けたいという気持ちが強すぎるあまり、未完成のまま置いてあるものが、私の周りには意外とたくさんあることに気がついたのです。
無我夢中だったあの日のステップと、未完成の余白
でも、真っ白なトッピング部分をじっと見つめていると、不思議と「これはこれで、なんだか素敵かもしれない」と思えてきました。完成していないからこそ、このページを開くたびに「今日はすごく暑いから、みずみずしいスイカを乗せちゃおうかな」とか「少し疲れているから、あまーいチョコレートのマカロンがいいな」と、その日の気分に合わせて自由に想像を膨らませることができるからです。

もし、あの時バシッと一つのフルーツを描き込んで完成させていたら、こんな風にワクワクしながら想像する余白は残っていなかったかもしれません。未完成だからこそ生まれる楽しさがあることに、少しだけ心が軽くなりました。
ふと、札幌のオーディションで全力で踊った日のことを思い出しました。雪深い地元には本格的なダンススタジオなんてなくて、夜の窓ガラスに映る自分の姿を鏡代わりにしながら、見よう見まねで練習していた日々。そこから一人で札幌へ向かったあの日の私は、技術なんて全然足りなくて、振り付けも粗削りで、まさに未完成そのものでした。周りの候補者たちが洗練された完璧なパフォーマンスを披露する中で、私はただただ無我夢中で、とにかく笑顔で踊り切ることしかできませんでした。
それでも、審査員の方に「君の笑顔には人を元気にする力がある」と言っていただけたのは、完璧じゃないからこそ溢れ出ていた、必死な熱量や泥臭さみたいなものが伝わったからだと思うのです。あの時の私は、トッピングの乗っていないパフェのような状態だったのかもしれません。足りないものだらけで、まだまだこれからだけど、だからこそ「この先、どんな素敵なものが乗るんだろう」という期待を持ってもらえたのだとしたら、未完成であることも決して悪いことではないと思えます。
余白を残したまま、今日も新しいステップを踏む
もちろん、完成された素晴らしいものには強く憧れます。いつか絶対にトップアイドルになって、誰もが笑顔になるような、キラキラとした最高のステージを作るという夢は、一日だって忘れたことはありません。そのために、毎日の練習も発信も、お母さんと一緒に進めている衣装作りも、全部全力で頑張っています。
でも、その完璧な夢に向かっていく途中の、迷ったり悩んだり、時には立ち止まってしまう「未完成な今の私」も、全部ひっくるめて愛おしい時間なんだと、このパフェのイラストが教えてくれました。ファンのみんなが「成長していく姿を見るのが楽しい」「一緒に夢を追いかけているみたいでワクワクする」と言ってくれるのは、私にまだ真っ白な余白がたくさんあるからこそ、みんなと一緒に色を塗っていけるからなのだと思います。
引き出しから出したスケッチブックは、あえてトッピングを描き足さずに、そのまま机の上に出しておくことにしました。いつかとびきり素敵なスイーツに出会って、「絶対にこれだ!」と思える日が来たら、その時にゆっくり描き足せばいいのです。それまでは、この真っ白な余白と一緒に、毎日のワクワクを楽しんでいこうと思います。
時計の針が進み、外の空気が少しずつ暖かくなってきました。今日も新しい一日が始まります。大きく深呼吸をしてストレッチをしたら、まだ上手く踊れなくて途中で止まっている、新しいステップの練習に向かいます。未完成な私のままで、今日も全力で、笑顔いっぱいに楽しんでいきます。
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