この記事の要約
初夏の朝5時。昨夜縫いかけのまま机に放置してしまったチュール生地の衣装。朝日を反射する待ち針と不格好なギャザーを見て、普段なら焦るところを、今朝はその未完成な状態が妙に愛おしく感じられました。失敗を繰り返しながら手作りする衣装も、トップアイドルを目指して泥臭くもがく今の自分自身も、どちらも同じ「夢の途中」。完璧ではないからこそ宿る熱量と、応援してくれるファンの方々への想いを新たにした朝の出来事です。
朝5時の机に残された、縫いかけのチュール
今朝、5時のアラームを止めて思い切り伸びをすると、少しだけ開けていた窓の隙間から、初夏のさわやかな空気が流れ込んできました。毎朝のルーティンであるストレッチ用のマットを敷く前に、ふと視界の隅に飛び込んできたのは、部屋の隅にある小さな作業机です。そこには昨夜、どうしてもまぶたが重くなって途中で投げ出してしまった、手作り衣装のパーツが無造作に置かれていました。

夏のイベントに向けて準備している、ピンク色のチュールスカートになる予定の布。隣には使いかけの糸巻きや、不揃いな形に切り抜かれたスパンコールが散らばっています。布そのものも、まだギャザーを寄せるための荒い縫い目が走り、銀色の待ち針が無数に刺さったままの、くしゃくしゃの塊にすぎません。
いつもなら、この中途半端な状態を見ると「ああっ、また散らかしたまま寝ちゃった!」と少しだけ焦る気持ちが湧いてきます。でも、朝の柔らかい光が差し込んだ机の上で、布に刺さった待ち針たちが朝日を反射してキラキラと瞬いているのを見ていると、なんだかとても愛おしいもののように思えて、片付ける手が止まってしまいました。まだ形を成していない、誰にも見せられない裏側の状態。そこには、「もっとふんわりさせたいな」「ここでリボンをつけたら可愛いかも」と、夜通し悩んでいた私の手の跡が、そのまま残っていたからです。
完璧じゃない状態が教えてくれる熱量
SNSでファンのみんなに発信するときは、できるだけ一番上手く踊れた動画や、とびきりの笑顔で撮れた写真を選んでいます。見てくれる人に元気になってもらいたいから、キラキラした完成品を届けるのが私の役割だとずっと思ってきました。だからこそ、裏側にある泥臭い作業や、何度も失敗して布を無駄にしてしまう不器用な時間は、隠しておくべきものだと無意識に決めていたのかもしれません。
けれど、この縫いかけの布には、完成された衣装にはない、生々しくて強い熱量がこもっている気がします。思い返してみると、北海道の実家で初めて自分で衣装を作ろうとしたときの記憶が蘇ってきました。外は真っ白な雪が降り積もる夜、ストーブの近くで母と一緒にミシンを囲んだあの時間。冷え切った外の世界とは裏腹に、ストーブの上のやかんがシュンシュンと音を立てるあたたかな部屋でした。
「笑ってる人のところに夢は来るんだよ」と、母は私の不格好な手つきを絶対に笑わず、いつも隣で見守ってくれました。何度も糸を絡ませ、布を切り間違えては泣きべそをかいていましたが、少しずつ形になっていく過程そのものがたまらなく楽しくて、夢中で針を進めていたのです。完成したものを身につけた瞬間より、あの「どうなるかわからないけれど、絶対に可愛くするんだ」と信じて手を動かしていた途中の時間のほうが、私の原動力になっていたのかもしれません。
夢もまた、まだ縫いかけのまま
そう考えると、今の私自身も、机の上のチュール生地と同じように「未完成のまま」なのだと気づかされます。テレビの中で輝くアイドルに憧れて見よう見まねでダンスを始めた5歳の頃から、私の夢はずっと形を変えながら続いています。高校1年生で札幌のオーディションに挑戦したときも、結果は落選でした。

あの時、大泣きしながら帰りの電車に揺られていた私は、完全に自信を失って、糸が切れてしまったような状態でした。それでも、審査員の方に言われた「君の笑顔には人を元気にする力がある」という言葉だけを胸の奥に握りしめて、毎朝5時起きの猛特訓を続けてきました。大手事務所という立派な額縁があるわけでもなく、すべてが手作りで、手探り。まだまだトップアイドルという目標には遠く及ばない、縫いかけの夢の途中です。
それなのに、SNSを通じて出会えたファンの方々は「元気をもらったよ」「一緒に夢を叶えようね」と声をかけてくれます。彼らは、完成されたアイドルを見たいわけではなく、夢に向かってもがいている途中の私ごと受け止めて、背中を押してくれているのかもしれません。完璧ではないからこそ、一緒に夢を追いかける過程を楽しんでもらえる。そう思うと、未完成であることは決して恥ずかしいことではなく、これからどんな色にも染まれる「希望の余白」なのだと胸が熱くなりました。
いつか形になる日を信じて針を進める
机の上の布にそっと触れてみると、昨日までの私が込めた小さな祈りが、指先から伝わってくるようでした。完成を急ぐ必要はない。不格好な縫い目があっても、途中でやり直した跡があっても、それを含めて全部が「私だけの衣装」になっていくのだから。完璧なものをポンと出せる魔法は持っていないけれど、泥臭く何度もやり直すことなら誰にも負けません。
朝練を始める前に、少しだけ作業を進めようと思い立ちました。裁縫箱から新しいピンク色の糸を引き出し、慎重に針の穴へと通します。一針ずつ進むごとに、布は少しずつギャザーを寄せ、ふんわりとした形へと近づいていきます。いつかこのスカートを穿いて、満面の笑みでステージに立つ日を思い描きながら。このいびつで愛おしい途中の時間を、これからも大切に抱きしめて歩いていこうと決めた、初夏の朝の出来事です。
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